私は、しわひとつない着つけよりも、ゆったりとしわのある着つけを好む。
しわを出さないための小物をあえて使わない、というところだろうか。
それを、だらしない着方と見る方もあるかも知れぬ。
さて、茶の湯の師宅で内弟子をしていた15年程前、水屋から稽古を拝見していた時のことである。
お弟子さん方の後姿を何気なく見ていたら、ある女
性の
衣紋が、何かいいなぁ、と感じた。
半襟の後ろが、くしゅくしゅと、やわらかいしわの風情がよい。
その頃の私は、プラスチックの襟芯しか知らなかったし、半襟はぴんとした方がいいのかと思っていた。
しかし、これ以後は長襦袢に
三河芯を縫いつけ、半襟をかけることにした。
くしゅくしゅは、半襟を上手に縫わないと、また芯の良し悪しで、だらしなさと紙一重になる。
くしゃくしゃに、だらしなくなる時は、芯を縫いつけてあるにもかかわらず、プラスチックの襟芯を入れねばならず、不本意な思いをするなど、なかなかに難しい。
そして、着方としては、後ろの半襟はくしゅくしゅと、程々にゆったりと抜き、前は深めにきっちり合わせている。
着つけは、身分や年齢、体形によって、異なって然るべきであるのに、画一化していないだろうか。
それぞれの着方があるはずで、その
一例として私の
好みを述べた。
(つゞく 「
きものの愛すべきしわ2」「
同3」)
参照 緑水庵HP 庵主の着物について「
こしらへ」
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