高校生の頃、まっすぐ帰宅することが多かったのは、午後4時からの時代劇の再放送見たさ、
大岡越前や
銭形平次などが目当て。
いくつか気に入りの要所要所はあるのだが、大川橋蔵の平次が出かける時、おかみさんが
切り火を切るところもそのひとつで、なんてイナセなのだろう、と思っていた。
時はめぐって十数年後、江戸の道具を紹介するNHKの番組で、江戸切子、江戸指物、打ち出しの鍋などと共に
火打石があった。
欲しい!
商店名は出なかったが、暖簾(看板だったか)で分った。
しかし、当然の如く電話帳に火打石などという項目はなく、電話局の番号案内でも連絡先は分からなかった。
そこで、NHKに問い合わせると、その店の意向で教えられないとの事であった。

そのままに5年くらい後であろうか、たばこと塩の博物館の常設展示で
火打金(がね)を見つけた。
展示品は覚えのある商店の新しいものにみえたので、聞くと江戸東京博物館のミュージアムショップで扱っているという。
買いに行こうと思いながら、さらに1年ほど経った頃、たばこと塩の博物館のミュージアムショップのリニューアルにより火打石を扱い始めたと知り、すぐに求めた。
数年来、欲しいと思っていたものを手に入れ、
満悦の態テイである。
その話を知人にしたところ、新しい和服をおろす時は、お祖母様が吉日を選び、切り火を切るという。
その火打金を見せてもらうと製造元は同じだが、私が求めたようなよそ行き顔ではなく、木の部分がない鋼(はがね)だけのものである。
生活用品という感じが濃厚で数段かっこよく、なにより数十年の
年季が感じられる。
少しがっかりしたが、年季を入れるため、時折切ってみたりしているのだ。
あれから、もう4、5年は経とうか。
(つゞく 「
火打具2」)

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