近世・現代、練香を焚く道具として、茶席の炉・アロマポット・電気香炉などを書きました(
参照 「
たき方1」「
たき方2」「
たき方3」)が、次は伝統的な道具を紹介します。
<阿古陀あこだ香炉>(画像上)
木製の阿古陀瓜型で火屋(火舎・穂舎)
ほや(金属の網)をかぶせた小型の香炉です。
灰中に炭もしくは炭団
たどんを埋
いけて練香をの
せ、空薫
そらだきをします。
古作としては、鎌倉時代の「鳥蒔絵平文」(MOA美術館蔵)、室町時代の「初音蒔絵」(東慶寺蔵)、「梨子地菊蒔絵」(逸翁美術館蔵)、「秋草蒔絵」(サントリー美術館蔵)が著名です。
なお、いくつかの書籍に「阿古陀香炉」は「火取」「火取母
ひとりも」「火取香炉」と同じものとして説明さ
れています。
歴史の中で用途や呼称が変わり、複雑です。
「松喰鶴蒔絵螺鈿二階棚」(
東京国立博物館蔵)
(画像中-提供:東京国立博物館)は明治時代製作ですが、『類聚雑要抄』(12Cころ、作者不詳、有職故実書)、『丹鶴圖譜』調度部(19C、水野忠央)などに書かれた平安時代の調度を復元しています。
二階棚の上段右に飾られるのが「火取」で、「火取母」(木製の阿古陀形)の中に「薫爐
こうろ」(金属製の阿古陀形脚附)を入れ、「火取篭」(金属製の網)を被せ、網の左右に匙と箸を挿しています。
また、練香を用いない香道(室町末に確立)において、阿古陀香炉は炭団を運ぶ道具です。
席中で阿古陀香炉の炭団を聞香炉
もんこうろへ移しますが、「火取香炉」(略して「火取」とも)と呼びます(由来・呼称とも善政公)。
<空薫香炉>
金属や陶磁器で作られた空薫用の香炉で、阿古陀香炉と同じように焚きます。
供香用の大型香炉や聞香用の小型香炉には火屋が附属していませんが、空薫用には蓋や火屋が伴うのが一般的です。
画像は、阿蘭陀の小器を香炉に見立て、南鐐の火屋を誂えています。
参考文献 日本の美術276 『香道具』至文堂刊
『香道の歴史辞典』神保博行著、柏書房刊
『桂香』松隠会刊
(つゞく 「
練香6 たき方5」)
(f Likeはフェイスブックに登録の方のみ反映) 両方のclick! ありがとう。 →