(つゞき 「
反魂香2」)
「反魂香(返魂香)」について、『日本国語大辞典』(小学館)には[一](
参照 「
反魂香1」)と下記[二]がある。
[二]能楽曲目名。
①鎌倉の商人何某の娘は、去年都へのぼったままの父を慕って都へいそぐ途中、
尾張の宿で旅の疲れのために死ぬ。折しも同じ宿のとなりの部屋に泊まり合わせて
いた父がこれを知り、森の御僧と呼ばれる高僧のもとに娘の死体を運んで回向を頼
む。父が僧から譲られた反魂香を焚くと娘の亡霊が現われる。廃曲。不逢森(あわで
のもり)。
②謡曲の闌曲の一つ。①のクセの部分を謡物として独立させたもの。漢王が李夫人
の死をいたみ反魂香を九華帳の中にたくと、夫人の姿が現われる。観世流。
能「反魂香(不逢森)」は廃曲になっていて、よく分からなかったので気に留めておこう。
闌曲
らんぎょく「反魂香
はんごんこお」の詞章は以下の通り。
立ち去りて跡もなく。形も消えて跡ハたゞ。煙ばかりぞ反魂の。孝行の子ならバなど
や暫しもとゞまらぬ 傳へ聞く漢王ハ。李夫人の別ゆゑ甘泉殿の床の上にふるき衾
ふすまの恨をそへ。九花
きうくゎ帳の中
うちにてハこの香の煙を立て。月の夜更けゆく
鐘の聲。艶容
えんよう便々とけしきだつ。玉殿に映ろひて。李夫人の御姿。ほのかに
見え給へり 三五夜中の新月の。夜半の空隈なくて。長安
ぢょおあん雲上
うんしょおの
粧ひ氣色に至る心ちして。皆感涙をうるほせバ。君も龍顔に御袖をおしあてゝ。反魂
の煙の中に立ち寄らせ給へば。又李夫人ハ消え消えと。時雨もまじる有明の。見え
つ隠れつ陽炎の。あるかなきかの御姿。かくやと思ひ知られたり
(『観世流改訂謡本 番外四 蘭曲中巻』国立国会図書館本)
(つゞく 「
反魂香4 能『花筐』」)
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