
(つゞく 「
塩焼5」)
志野流香道の「地敷」裏には、銀地に炭竈
スミガマ(左)・塩竈
シオガマ(右)の煙競
クラべが砥の粉の泥絵で描かれている(
参照 「塩焼5」)。
地敷の「煙競べ」は炭焼と塩焼の煙だが、『源氏物語』柏木の巻「煙競べ」の歌も気になる。
柏木が女三宮へ贈った歌、私の遺体を燃やす煙は固まって思いがこの世に残るだろう、それに対する女三宮の返歌
立ちそひて消えやしなましうきことを思ひみだるる
煙ケブリくらべに
(できることなら、あなたの燃える煙に立ち添って一緒に消えてしまいたいくらいです。
私のつらいもの思いの火に乱れる煙-悩みは、あなたのとどちらが激しいかを比べ
るために)
塩焼く煙はしばしば恋心を象徴する(
参照 「
塩焼1」)が、「柏木」では心情を荼毘の煙によそえて競
キソっていて、炭焼・塩焼の煙競べが根底にあったとしても、他の煙競べに発展している。
志野流には煙競べの組香が3通り(うち2通りは同じ)あり、1通りを語句の列挙にとどめて紹介する。
「煙競」の香6種は炭竈・塩竈・明石浦・千賀浦・小野山・海士人で、明石浦と千賀浦は塩焼の名所、小野山は炭焼の名所。
聞きにより、炭・塩・曙・夕暮・火串
ホグシ・漁火・浅間・冨士。
炭竈と塩竈の煙、その風景の朝夕の比較、山の鹿狩りの松明と海のかがり火、浅間山と冨士山の噴煙、とさまざまな煙競べとなっている。
また、現在の志野流にはないが富士と浅間の火山の噴煙競べだけの組香もある。
(この組香の証歌は、能『富士太鼓』の詞章にもなっている)
参考文献 新 日本古典文学大系『源氏物語 四』(岩波書店)
新編 日本古典文学全集『源氏物語4』(小学館)
『茶道と香道』水原翠香著(博文館)、 『香道蘭之園』尾崎 左永子著(薫遊舎)
『香道』杉本文太郎著・矢野 環校閲(雄山閣)
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