
「
梅2」「
梅3」で挙げたように、梅には異名・別称が多いが、故事・逸話なども多い。
・羅浮仙
ラフセン ~羅浮の夢の故事
羅浮山の梅の仙女
・
林和靖リンナセイ(林逋
リンポ) ~妻梅子鶴
宋の詩人(967-1028)
「疎影横斜水清浅 暗香浮動月黄昏」
梅の花筏は珍しい?
・飛び梅 ~菅原道真の故事
(『源平盛衰記』『十訓抄』など)
(cf.渡唐天神)
「東風吹かばにほひおこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな
(春な忘れそ)『拾遺集』)」
「聞き及びたる飛梅とは何れの木を申し候ふぞ
(謡曲『老松』、cf.好文木→その2)」
「梅は飛び桜は枯れぬ菅原や 深くぞ頼む神の誓を
(源順『源平盛衰記』)」
「梅は飛び桜は枯るる世の中に 何とて松のつれなかるらん
(浄瑠璃『菅原伝授手習鑑』)」
・鶯宿梅 ~紀貫之女
(紀内侍)の故事
(『大鏡』など)
「勅なればいともかしこし鶯の 宿はと問はばいかゞ答へむ
(一説に道綱母『拾遺集』九・雑)」
「一木の梅を植えて詠めしに、此花はいたう色ある由叡聞に達し、勅諚あり禁裏へ花
を召れしかば、其時彼女、勅なればいともかしこし鶯の、宿は問はゞいかゞ答へん、
斯様に詠みしゆゑ、その口ずさみ一首により、召るゝ梅を許されて、
(謡曲『鴬宿梅』)」
・東北
トウボク / 軒端の梅 ~和泉式部の故事
(『蔭凉軒目録』『応仁記』など)
「さてはこの梅は和泉式部の植え置き給ひしに依って、梅の名をも和泉式部と申す
かや (略) この梅を植え置き軒端の梅と名づけ
(謡曲『東北』)」
・箙の梅 ~梶原景季の故事
(『源平盛衰記』)
「総じてこの生田の森は、(略)景季何とか思ひけん、この花を手折り箙にさす、この
花笠印となって、功名著名を挙げしによって、景季かへってこの花を礼し、即ち八
幡叡感の神木と敬せしよりこのかた、名将の古跡の花なればとて、箙の梅とは、申
すなり
(謡曲『箙』)」
異名だけでなく、これらも道具の銘や菓銘にすると気が利いている。
(つゞく 「梅5」)

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