裏千家茶道に、「付干
ツケボシ」という香がある。
風炉の炭手前では、白檀または沈香(といっても香道で用いるような上質のものではない)を三片用意し、二片を風炉中で焚く。
一方、炉開き前、
風炉の名残(10月)には道具を惜しみ大切にする(つくろい茶碗・寄向
ヨセムコウ・塗りの八寸など)、香木も同様で、別種の香を三片寄せた「寄香
ヨセコウ」をしても良いのだが、それに付干を用いることがある。
白檀に接着材で沈香の粉を付けるのだが、接着剤は古くは
甘葛、現在は入手困難なため砂糖水や蜂蜜などで、付ける沈香は名香の焚き殻とも沈香を截った時の截り屑とも、色々に聞く。
私は、水で薄めた蜂蜜で、香道の沈香の截り屑を乳鉢で擂って付けた。
茶道の他流の付干は見聞きしたことがなく、存在するかさえ知らないが、
志野流香道・茶道には付干があり、『松陰』16号(志野流香道松陰会本部発行)に、
蜂谷家
(緑水庵註:志野宗信から数えて4世より蜂谷家が代々世襲、現在20世)の付干は他の茶家
とは異質である。小指の先ほどの松・杉・満天星
ドウダンの実、松葉・もみじ葉に香
粉、鬱金を
布海苔で塗り固めたもので
初夏風炉の中で焚く。
また、19世宗由大宗匠(1902-88)が「中日新聞」で連載された(1978-79)記事に、
付干 (前略)茶席では
初風炉(緑水庵註:5月)の時期にくべたりする。一面その姿は
夏の風情・景色を現すものとして賞美され、床の間に飾ることもあった。
15世宗意(1803-81)作付干(「仙人香箱」に入る、18世宗致箱書)を図版で見ると、とても風雅、一度作ってみたい。
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