(つゞき 「
椿餅1」)
さて、平安当時はもちろん小豆餡などなく、椿餅が現在のような形になったのは江戸中期以降のことらしい。
『古今名物御前菓子図式』(1760)上巻に、
引飯
ヒキイヰを狐色程にいり、粉にして、羅合
キヌフルヒにかけ、白沙糖を竹簾
タケドヲシに
てふるひ、右の粉百目
ニ白沙糖百目、肉桂粉
ニクケイノコ拾匁合せて、手にてよく揉合
せ候て、少
シしめり出申候時に、布を水にしめし、甑
コシキの内に敷、随分よく蒸、杵
臼
ツキウスにて、右やはらかに成候程つき、椿の実程にまるめ、上下、椿の葉二枚に
はさみてよし。但、口中にてきゆるごとくにて、味宜しきもの也。
同じく下巻に、
木み餅に同し
(緑水庵註:上々米粉一升を湯にてこね)。紅に
て染、内へ餡包み、椿の花形
ナリに致し、椿の葉にて
挟申候。
一方は狐色に炒った道明寺粉を粉にして、砂糖と肉桂を入れ、蒸して臼で搗き、
椿の実に見立て、他方は糝粉餅を紅で染めて餡を包み、
椿の花に。
なるほど、現在虎屋などで肉桂の生地で餡を包んだものを作るのは、上記二つの製法の折衷なのだろう。
なお、虎屋では椿粉を用いるそうで、あの色になるのか。
とらや和菓子用語集に、餅米を蒸して乾燥させた後の加工の違いで、以下のように分類されている。
適当な粒に粗挽き ➝ 道明寺粉
粉砕して(粒子が小さい)少しずつ煎り上げる ➝ 新引粉(さくらみじん粉)
〃 (粒子が大きい) 〃 ➝ 新引粉(荒粉)
〃 (粒子がより荒い)狐色まで煎り上げる ➝ 新引粉(椿粉=炒り道明寺粉)
参考文献 『近世菓子製法書集成 1』東洋文庫(平凡社)
(つゞく 「
椿餅3」)
←click! (クリックいただくと、ランクアップ) ありがとう。