(つゞく 「
卯杖・卯槌3」)
卯槌
ウヅチは、平安時代に正月初卯の日に糸所
イトドコロ(中務
ナカツカサ省縫殿寮
ヌイドノリョウ)から邪気払いとして朝廷に奉った。
また、貴族間でもお互いに贈り合っている。
材:桃木
大きさ:長さ3寸、1寸四方、糸の長さ5尺
形状:四角で、竪に孔をあけ、
五色の組糸を通し、下へ総
フサのように飾り糸を垂らす
飾り方:昼御座
ヒノオマシの御帳台の南西
(緑水庵註:裏鬼門)の角柱にかける
後には、卯槌を5尺ばかりの四角面取した桃の細い柱に挿す(卯槌を卯杖に
挿す形)こともあった。

『枕草子』83段に、「御文あけさせたまへれば、五寸ばかりなる卯槌ふたつを、卯杖のさまに、
頭などをつヽみて、山橘、
ひかげ、山すげなどうつくしげにかざりて、御文はなし」とある。
賀茂斎院よりの文筥に文がなく、卯槌が卯杖の如く頭を紙で包んであり、その紙に和歌が書かれているという場面。
ここからは、通常卯槌は頭包みしないように読みとれる。
『源氏物語』浮舟の巻には「わか君のおまへにとて、卯づち參らせ給、(中略)、卯づちおかしう、つれづれなりける人のしわざと見えたり、またぶりに山たちばなつくりて、つらぬきそ
へたる枝に」とある。
上は、現代の卯槌(裏千家東京道場の初釜式)で、
頭を紙包みし、
日蔭鬘ヒカゲノカヅラ・稲穂が飾られているが、山橘・山菅は見る限り分からない。
ちなみに、亀戸天神社内
御嶽神社の卯槌は、六角柱で六面に歳寒三友(松竹梅)の彩色、
頭に紙包みして
五色の糸で括られている。
五色とはもちろん五行思想、木火土金水、の意で、五色は青赤黄白黒、五時は春夏土用秋冬、五方は東南中西北で、3寸四方の木槌に森羅万象が封じ込められている。
ところで、漢代の剛卯(
参照 「卯杖・卯槌3」)は赤青白黄であり、黄色がないなら分かるが、何故黒がないのだろう?
参考文献 『古事類苑』『江馬務著作集』
(つゞく 「卯杖・卯槌5」)

←click! (クリックいただくと、ランクアップ) ありがとう。