(つゞき
北海道立函館美術館「長谷川潾二郎展」その1)
この展覧会を見るまで、潾二郎に関してポスターの「猫」の絵しか知らなかった。
函館出身であることを知ったのも、会場に入り直ぐのハリストス教会や函館の風景画によってである。
今回買った画文集(右)によると、父親は函館新聞の社長兼主筆で、その息子である
四兄弟(潾二郎は次男)いずれもが文芸や絵画など芸術的な仕事を残している。
『長谷川潾二郎画文集 静かな奇譚』 求龍堂
家庭環境・友人などの影響を受け、潾次郎も幼少期
から絵画・文芸・音楽に興味を示す。
上京後20代前半には探偵小説を発表し、江戸川乱歩や稲垣足穂と並んで「幻想派」として高い評価を受けた、とある。
乱歩・タルホともに数編しか読んでいないが、その作風と潾次郎の画風は隔絶していて、潾二郎の小説を想像しがたい。
読んでいないので何とも云えないが、潾二郎の乱歩やタルホと並ぶ作風と、後年の文章への変容は興味深い。
画文集に載る中年または老年になっての文章は、絵の印象と一致する。
乱歩やタルホの非日常的な趣きに対し、潾二郎の絵や文章は日常を切り取っていて、まるで対極にある。
潾二郎の絵や文章から、淡々と穏やかで、世の中を傍観したような諦めの混じった、でも投げたふうでない人となり、そう云った印象を受ける。
さて、風景画と静物画で有名らしいが、私は静物画の方が好き。
中でも、画像のように机のフォルムを描かず、二分割された背景の配色の妙が魅力的。
静物画の硝子・琺瑯・陶磁器に、陽射によって窓枠が、また窓枠の中に画家自身の影が映り込んでいるのは、幻想派の残り香か。
静物画は画集でも素敵だが、風景画は樹木や竹の表現など独特の筆致で見入るものがあるのに、印刷されるとそれが伝わらない。
(つゞく
函館山からの眺望)
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