五節句のうち、現在でも上巳・端午・七夕は一般的だが、人日・重陽は知らない方もあるようだ。
本日、重陽の節句。
中国で、彭祖
ホウソ(
参照 「
菊12」)を崇拝する習俗が日本に伝来したと云われる。
周の穆
ボク王のころ、慈童が山中の菊花咲く幽谷で仙術を修行し、仙人彭祖になったと云う。
中国ではこの日、登高
トウコウ(杜甫に「登高」がある)といって山に登り、菊酒を飲み、詩を作ったり楽器を奏でたりして、風景を愛でたと云う。
日本では、天武帝のころ「菊見の宴」を催したのを始まりとし、宮中では菊酒・詩歌を作って菊合せ・被綿
キセワタ(
参照 「菊2」)・後の雛(秋雛)などの風習があり、江戸時代に一般化されると菊人形が流行した。
また、能「枕慈童」「菊慈童」(
参照 「
菊10」)は、前述の慈童の伝説を取りあげたものである。
さて、昨日の香の稽古では、組香「重陽香」をした。
試香の後、本香が九炷
チュウなのは、重九とも云われるように、月日に極陽の九が重なるからである。
出典は、和漢朗詠集にも載る次の詩歌である。
燕知社日辭巢去 菊爲重陽冒雨開 秋日東郊作 皇甫冉
わがやどの菊のしら露けふごとに いくよ積りて淵となるらむ 元輔
(意)燕は秋の社日になった事を知って、巣を捨てて去って行く。
菊の花は九月九日に間に合おうとして雨の中をいとわず開く。
秋の日、東の郊外における作 皇甫冉
コウホゼン(李端とも)
(意)わが宿の菊の露は、この重陽の節句ごとに幾世の間つもりたまったならば、
かの甘谷の水のように深い淵になることであろうか。
元輔(中務とも)
しかし、新暦9月9日では菊には未だ早く、殊に今年は秋の気配が乏しい。
ちなみに、今年の旧暦9月9日は新暦10月16日である。
なお、「わが宿の」の歌は組香「菊花香」でも引かれる(
参照 「
菊7」)。
参考文献 『和漢朗詠集新釈』 明治書院
『日本古典文学大系73 和漢朗詠集・梁塵秘抄』 岩波書店
『新日本古典文学大系7 拾遺和歌集』 岩波書店
『新訂中国古典選16 三体詩(上)』 朝日新聞社
(つゞく 「
菊2 被綿1」)
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