
(つゞき 「
その1」「
その2」)
しかし、これに先立つ川上不白の『不白筆記』(1794)はほぼ同じ内容であるから、玄々斎は『不白筆記』に則ったと言えよう。
江戸千家茶の湯研究所刊の『不白筆記』を読みたいのだが、古書店でもなかなか手に入らない。
再版をしてくださると有難いのだが。
一、守破離と申三字ハ軍法の習二在リ。守はマモル。破はヤフル。離ははなる、と
申候。
弟子に教ルハ此守と申所斗也。弟子守ヲ習熟し能成候へば自然と自身よ
りヤブル。是ハまへに云已が物二成りたるが故也。上手の段也。扱守ニテモ片
輪、破ニテモ片輪。此上ニツヲ離レテめい人の位也。前の二つを合して離れて、し
かもニツヲ守ル事也
(緑水庵註:参照「その2」、玄々斎はこの部分を書き落としたか?)。此守は初
ノ守トハ違也。初ノ守ト今此守ト如何。此一段ハ誠二一大事の教也。工夫有へし。
(『芸の世界
-その秘伝伝授』 西山松之助 講談社)
また、『茶話抄』は如心斎の教えを横井淡所が聞き書きしたもので、不白(1716~1807)が補足した部分に、
茶話ニ添、(中略)
或時、武家万上手下手を問ふ、予答テいふ、守破離と云事軍法用、尤用方違ひ候
へ共、茶道ニ取て申候ハヽ、
守ハ下手 尤常躰ノ下手トハ違ひ候、事サ
(緑水庵註:訓ワザ)ヲシテ
夫ニツナカレタル物也、守株待兎、
破ハ上手 尤常ノ破トハ違候申候、守テ破ル也、
時二
寄テ守ルモ法、破ルモ法也、見風遣帆、
離ハ名人 常ノ離タルトハ違候、事サヲ盡シ、
離レテ守ル、
応無所住而生其心、
(『茶道古典全集10 茶話抄』淡交社)
ちなみに、「守株待兎
シュシュタイト」は韓非子の故事からの成語、「見風遣帆」は『五燈會元』に「看風使帆、正是隨波逐浪」がある。
「応無所住而生其心
オウムショジュウニショウゴシン」は『金剛経』にあり、不白は『茶道訓』などにも登場させている。(つゞく 「
その4」)

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